芸術

知っておこう劇場マナー

寒くなるにつれて劇場の熱が帯びてきました。
気温が下がり始めると劇場通いが盛り上がる季節になる、とも言えます。笑

イーゴリ公のオケリハ@ノーバヤ・オペラ

時が経つのは本当に早いです。

最も美しい季節とも言える黄金の秋

今年はあまり暑くならない夏でしたが、それでも爽やかで日が長く明るい季節は人々を開放的にさせていました。

その季節も終わってすとんと気温が落ち、黄金の秋と言われる美しい季節を愛でている間にこれまたあっという間に初雪が降り、季節が移ろいました。

雪の結晶が見えます

9月に劇場シーズンが始まり、早速あちこち劇場やコンサートホールに足を運びましたが、チャイコフスキーもベートーベンもボロディンもバレエや民族舞踊も、本当にいつも沢山の人に楽しまれ愛されているなぁと改めて思いました。

さて、厚着をするこの季節。ロシアでは基本的にコートはクロークに預けます。まず劇場に入ったらクロークへ向かい、身支度を調えてから観客席へ向かうのが基本的な流れになります。

*劇場に入ったら*
・クロークにコートを預ける(номерок/番号札はなくさないよう注意!)
・その際、бинокль/双眼鏡を借りると、終演後クロークの列に並ばず優先的にコートを受け取ることが出来る(劇場にもよりますが大体100ー200ルーブルくらい)長い演目や帰りに並びたくない人には使わなくても借りておくのもお勧め
・靴を履き替える場合、ブーツをクロークに預けることも可能
・大きい荷物やリュックなどは預けろと言われることもある(預けられる場合はその方が楽)
・携帯はマナーモードまたは電源を切るようにする。バイブも時として邪魔になるので注意
・勿論、上演中の写真及びビデオ撮影は禁止。そうしている人がいたとしても真似してはいけません

携帯のマナーモードが基本的に普及していないロシアでは、コンサートの最中、ここ!という見せ場や静かなシーンで携帯が鳴ることがしょっちゅうあります。オペラのアリアのシーンや、ショパンの静かな旋律の時にピロピローンとなると相当に興ざめです。会場全体が一斉にイライラしてしまうので精神衛生上本当に良くありません。しかしアナウンスをしていても一向に効果がありません。
この際『観劇モード』という、劇場に入った瞬間に自動的に音が鳴らなくなるシステムがあれば良いのにといつも憤慨しています。。

高揚したお客さんのざわめきを、どーんと包み込む空間

ドレスコードについても迷われる人もいらっしゃると思います。
夏場、男性のハーフパンツやサンダルは入場拒否されてしまうことはありますが、スーツやネクタイでないと駄目だと言うことはありません。基本的にジーパンでも大丈夫です。
女性もとびっきりのお洒落をする人もいれば(カンヌか!と突っ込みたくなるマダムもたまにいます。見てるのは楽しいですが。笑)普段着でも勿論構いません。
ただ自分なりに気持ちが上がる服装で行くとわくわくして楽しい時間が過ごせると思います。
コートさえしっかり厚手のものにしておけば、薄着でも大丈夫です。室内が暖かいロシアならではですね。

劇場は元々社交の場でもあり娯楽の場でもあります。会場全体を全身で満喫のみです 😀

他の観客の迷惑にならない振る舞いをすること、しかし遠慮せずお洒落も舞台もしっかり楽しむ♪こと。
これが大人の劇場マナーだと思います。

 

 

 

 

 

初演キャンセル『ヌレエフ』@ボリショイ劇場

ボリショイ劇場で初演予定だった「ヌレエフ」の上演がキャンセルとなりました。

こちらのニュース映像↓どんな感じの舞台か、少し垣間見れます

ウーリン総裁曰く来年の5月に再度上演を行う予定とのこと。インタビューの全てはこちら(ロシア語のみ)

色んな噂が流れてはいますが、気の毒なのはダンサーだなぁと思います。
6月末に日本公演から戻ってすぐ短期間で仕上げて。色々追い込まれて、その上でのキャンセル。

 

先日このプラゴン(ゲネプロ)を見てきたのですが、正直言うと、色々間に合っていなかったのは確かだと思います。
7月2日開催のバックステージツアーで一部リハーサルの様子を見ました。その同じシーンを舞台で観たときに配置や雰囲気も全然違っていたので、構成が定まりきっていなかったのかなと。

この演目は踊りだけでなくオペラ歌手の歌もあり、俳優さんによる言葉や朗読もあり、ダンサー本人が言葉を話したりと通常のバレエとは別物になっているので、そりゃ色々まとまらないだろうなーと正直思います。
せっかくの初演であれば、やはり納得出来るものを世に出すのが劇場の役割です。
しかしキャンセルするという決断はとても重い責任が伴います。国立の劇場として「間に合いませんでした」は許されません。

 

ただ3年ほど前から国の政策で、国立の劇場(バレエ・オペラ・演劇)に対して年間の総上演数(国内のみ)が確か20公演以上も引き上げられ、劇場内でもタイトなスケジュールを組まざるを得ない状況なのだと思います。その被害を一番被るのがダンサーではあるのですが。

企業と同じで、そこに属しているダンサー(会社員)は結局組織を回すコマでしかありません。しかしその一人一人の力がなければ、大きな仕事も成し得ないのは、劇場であれ一般企業であれ自営業であれ全く変わりありません。

大きな組織を運営することはやはりどこかでしわ寄せがくるとは思います。ただ大きな組織だからこそ、世間から期待もされるし、新しいものを成し遂げられる人材を揃えることも出来る。

古典という伝統を守りつつも、時代の流れに沿って新しい物を造って行かなくてはならない義務が劇場にはあります。だからこそ、今回は「現代の英雄(2015)」で成功をおさめたチーム(キリル・セレブレニコフ/監督、ユーリー・ポソホフ/振付)を再結成し、新しいものを造ろうとしたのだと思いますし。その作品の一部↓

色んな人の期待を裏切る結果になってしまってはいますが、あれこれ言っても仕方ありません。

中途半端なものを出すのはやはりプロとしてあってはならない姿。振付家しかりダンサーしかり。

ということで賛否両論ありますし政治的な疑惑や噂も沢山飛び交ってはいますが、どれを信じるも全部、個人の自由。言いたいことを言えば良いと思います。来年5月に観たい人は観れば良いのだと思います。

舞台は結局個人の好みの世界ですから。

 

さて、遅ればせながら今回の題材になっているルドルフ・ヌレエフ(長野由紀さん/舞踊評論家の評)

異端児で性格に難あり・激しくこだわりの強い人というイメージですが、だからこそ素晴らしい偉業を残し後世に大きな影響を与えた伝説のダンサーだと思います。

古い映像ですが。『ジゼル」1979 Lynne Seymourと

個人的な趣味ですがローラン・プティの「若者と死」バリシニコフも良いですが、ヌレエフも見応えあります。

編集可能な映像ではなく、リアルな舞台で彼の激しい人生を表現するのは中々厳しいだろうなと改めて思いました。同性愛、葛藤、スキャンダルなど生々しさ満載な人生ですしね。美しい巨像の世界だけではないそのリアルな彼の姿を舞台で表現しようと挑戦してみたものの…やはり色んな障壁があったという感じでしょうか。

2018年の5月初旬、どのように仕上がってくるのか。再考の時間となりそうですね。