2018年の12月19日から、ボリショイ劇場の近くにあるノーヴィー・マネージというところで

ボリショイ劇場美術館100周年記念展 が開催中です。

 

1918年から2018年の100年間の劇場そして舞台の歴史と、その間に上演されたもの、未上演に終わった幻の作品などを含め 貴重な資料がこれでもか!と展示されています。

 

リムスキー=コルサコフのオペラ「金鶏」コーナー
⬆︎このデッサン画の衣装はどーこだ⬆︎
上の衣装が勢ぞろいすると、舞台全体はこんな感じ

このデザインはマリア・アレクセーヴナ・サコーロワ(関連記事/ロシア語のみ)のもの。彼女はアニメーション・スタジオ「ソユーズムルトフィルム」で経験を積んでいたようです。

ウラジーミル・ダニレヴィチ-①やイヴァン・イワーノフ・ワノ-②、また日本でも人気のある『霧の中のハリネズミ』ユーリー・ノルシュテイン-③のもとで仕事をしていた模様。彼女の独特の世界観はアニメーションの世界から来ているのかと納得です。

夫のヴァレーリー・レヴェンターリと夫婦共々舞台装飾のデザイナーで、レヴェンターリはマヤ・プリセツカヤの舞台「カモメ」などの舞台デザインも担当しています。彼もボリショイだけでなく、スタニスラフスキー=ネメローヴィチ・ダンチェンコ劇場やモスクワ芸術座にも関わっています。

 

*上に出てきたソ連アニメ界の巨匠たち と、作品をピックアップ

①ウラジーミル・ダニレヴィチ Владимир Данилевич

https://www.ivi.ru/watch/67469

 

②イヴァン・イワーノフ・ワノИван Иванов-Вано

https://www.culture.ru/movies/436/konek-gorbunok

 

③ユーリー・ノルシュテインの関連記事はこちら→「霧の中のハリネズミ」はどうできたかスプートニクより

 

舞台背景画や衣装、舞台美術のデザインをしている芸術家は、日本ではそこまで知られていない人たちが多いのですが、ロシアでは名前が出ると「あぁ、あの人ね」とか「〇〇の△△にも関係してた人よね」とかそういうコメントをちらほら聞きます。

例えばフョードル・フェドロフスキーというボリショイ劇場の美術担当(1927-53)そして舞台監督、劇場沿革で要になっている人物は、劇場の舞台だけでなくクレムリンの赤い星のデザインをしており、

これですね (wikipediaより写真引用)

ソ連を代表する芸術家です。もちろん彼の作品もこの展示会であちこちで見ることが出来ます。

 

中々日本では馴染みのない名前ですが上記のようなサコーロワのように、名高いソビエトアニメのスタジオで鍛えられていたような、多岐にわたる分野で実力を積み上げた芸術家たちが劇場を支えてきていたんですね。

また彼らも劇場で育てられてきたとも言えます。

バレエ「チッポリーノ」のコーナー
子供向け作品だとやはり色が鮮やかです
「くるみ割り人形」のコーナー
バレエ「せむしの仔馬」のデッサン画
実物はこれ。結構シュール・・・
登場人物達はかなりカラフル。原作は童話ですし子供の目を引くような色使い
キャラクターが中々濃いです

 

もちろんクラシカルな作品の衣装や写真も。

 

真ん中は100年以上前に作られた「ドン・キホーテ」の衣装。ドム・ナショーキナの展示会(2013年)以来久々の再会!
オペラの衣装から
靴と被り物コレクション
舞台メイクの下絵とメイクさんの様子や
大道具さんたちのアトリエの様子など
バレエ「ライモンダ」の衣装。うっとりするくらい上品な色彩。そして昔のクラシック・チュチュのチュールの質感の違いも感じます。写真では伝わりにくいですが・・・。ヴィルサラーゼの世界観を垣間見れます。

120点の衣装とデッサン画やポスター計450点ほどの出品です。映像もありかなり見ごたえたっぷりな展示になっています。ちょっと多すぎて途中でぼーっとしてしまいましたが。。笑

 

この美術館の人たちと関わるようになって早7年。
ダンサーたちとは違った意味での劇場愛。 彼女たちは舞台美術や伝統を守る役割に誇りを持っています。
整理・保管・管理しながら、さらにパフォーマンスとしてだけではない舞台芸術の側面を知る機会を作っていこうと、バックステージツアーをはじめこういった美術展を国内外で開催し、子供達へのマスタークラスやイベントなど様々な活動を行なっています。
一言で保管と言っても、衣装は1着とは言え上着・下・タイツ・帽子・髪飾り・マスク小物等備品も多く、全部で1セットというものが多いのでバラバラにならないようには勿論、刺繍部分など装飾を良い状態に保つことや、保管状態によって色味が変化することを防がないといけません。ただでさえ既に何度も舞台の上で使われて劣化してしまっているものが多いですし、古い衣装の扱いは中々気を遣います。

彼女達の仕事を含め、この日本で公開したことがない美術作品たち。やっぱり日本で紹介するぞと改めて思いました。

 

舞台ってダンサー達だけで成り立たず、場所が全てを育てるのだということを改めて実感です。そしてそれを保管し次世代に繋げることで、また新しいインスピレーションを与えることだってあります。

ロシアらしい色彩、アヴァンギャルドの挑戦、昔のお針子さん達の色重ねのセンス、魅せ方のヒント、などなど

温故知新というか、昔のものからも新しい何かを感じ取り学ぶことって沢山あります。

 

 

身体から身体へしか継承できない形のないバレエやオペラは、劇場という箱の中で様々な分野のエキスパート達によって守られ化学反応を起こして開花していきます。

全て人ありき ・・・それってどんな環境もそうですよね。

こうやって脈々と繋がっていくのだと思います。

 

 

舞台を作る要素の、万華鏡のかけらたちに出会える機会です。
2019年2月10日まで開催。是非足を運んでみてください。

 

*こちらノーヴィー・マネージ/Новый манеж詳細*

  • アドレス: Георгиевский пер., 3/3, Москва
  • 最寄駅: Охотный Ряд, Театральная, Площадь Революции
  • 電話: +7 495 692‑44-59, +7 495 645‑92-77
  • 営業時間: 火-日 12:00–21:00(月曜休館)

Выставка «Музей и Театр. 100 лет вместе (1918-2018)»

横に長い建物です

 

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>総合芸術としてのバレエ

総合芸術としてのバレエ

舞台というものは演者たちだけでは成り立ちません。裏舞台で支えている多くの人々の尽力あってこそ表舞台がより引き立ちます。
建築・歴史・哲学・文学・音楽・美術・デザイン・踊り・歌、全てを包括しているのが劇場芸術です。
生活の中で芸術はなくても良いものかも知れません。しかしあるとより豊かになるものだと私は考えます。 人でしか紡ぐことの出来ない伝統の世界。色んな角度から眺めてみると、きっと新しい発見があるはずです。

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