Monthly Archive: 1月 2017

ベートーヴェンのピアノコンサート@モスクワ音楽院

先日カワイピアノの方からお声掛け頂き、モスクワ音楽院教授パーヴェル・ネルセシアン(1964年ー)によるピアノリサイタルに行ってきました。

彼はドレンスキー教授の下で研鑽を積み、現在は世界各国でコンサートやマスタークラスも開催しているそう。ルガンスキーやマツーエフもこのドレンスキー教授の門下生だったのですね。音楽関係に関しては詳しくないので、色々繋がってくると面白いです。

プログラムはベートヴェンの3大ソナタ、悲愴・月光・熱情でした。
1曲目に悲愴をもってくるのか!とドキドキ。情感豊かなロシア人ピアニスト特有のちょっとやり過ぎ感があまりなく、淡々としかしすっきりドラマチックで聴き入ってしまいました。

そしてアンコールが2曲。
アンコール最後の曲の時、パーヴェルさんが鍵盤に指を置いて1音を出した瞬間にぞわっとしました。その曲はボリショイ・バレエ学校時代、校内コンサートで低学年の生徒達によく踊られていた作品の曲でした。曲自体も踊りもとてもシンプルなのですが、いかにも学校の生徒らしい踊りでとても印象的なもの。
ロシアにいるとたまに耳にするのですが、誰の曲なんだろう・・・と思いつつ月日が経っていましたが、これはチャンス!と、今回お声掛け頂いたカワイピアノの方に確認。

早速ピアニストご本人にお尋ね頂いた所、アナトリー・リャードフМузыкальная табакерка (Вальс-шутка)/音楽のオルゴール(ふざけたワルツ)/The Music Snuffboxだということが分かりました!
*ネットでは音楽の玉手箱と訳されています。

そのバレエ学校の『人形の踊り』はこちら↓
見付けたのはワガノワ・バレエ学校のものです。(ボリショイ・バレエ学校時代に観ていたものはピアノ伴奏が殆どだったので、こちらはちょっと印象が違いますが^^)

リャードフはバレエ・リュスとも関わっていたのですね。『キキモーラ』(1916年初演)も彼の作曲でした。
しかしはじめディアギレフから作曲の依頼を受けた時は結局仕上げることが出来ず、代わりにストラヴィンスキーが『火の鳥』(1910)を提供したとか。裏にはそういう経緯があったとは・・・。いつの時代も土臭い人間模様が色々あるんですね。教科書などではさらりと史実にしか触れませんが、そのどこか一カ所について詳しく調べると、何かしらのドラマやエピソードがあるなとしみじみ思います。そのちょっとした運命のいたずら的な瞬間や隙間に、後世に残る作品が生み出されることもあります。本当に人生何が起こるか分からないという感じですね。

こちらリャードフに関しての番組(全てロシア語)

彼は才能豊かだったようですが、どうもなまけものだったようです。きっと憎めない性格だったんでしょうけど。
この番組でも「天才は1%のインスピレーションと99%の努力と良く言いますが、例外もあるようです・・・」と始まっていますし(笑)
残した曲は小作品や短い物が多く、交響曲等は長すぎて性格的に創るのが面倒だったのでしょうか。しかし広くロシアに根付いている曲が多いです。

ベートーヴェンのコンサートでしたが、ロシア人作曲家や曲目についても改めて知ることが出来て満足です。

・・・さて、話はコンサートに戻ります。

物腰の柔らかい、ぺこりと頭を下げる感じがちょっと女性的なパーヴェルさんには、このアンコール最後の曲が一番彼らしい曲だった気がしました。
色んなピアニストがアレンジしているようですが、彼の演奏はとっても繊細で澄んだ音が本当にオルゴールの様で、聴いている最中ずっと人形の踊りが頭の中で流れていました。
いつも思うことは、アンコールの曲こそ、実は演奏者が一番弾きたかった曲なのではないかと。コンサートが終わってほっとした状態で弾くからリラックスしていて良い演奏になるんでしょうけどね^^

ここ数ヶ月ベートーヴェンに(今更)はまっている自分的にもかなり嬉しいコンサートでした♪

 

 

極寒クリスマスとくるみ割り人形

極寒クリスマス(1/7)となったモスクワ。

分かりますか?吐く息で髪の毛が凍っています

マイナス30度近くなると、外に出た瞬間目がパリっという感覚を覚えます。眼球が凍ると知人が言っていました。笑
確かにそういう感覚です。
そして鼻の中が一瞬で凍り、ちくちくします。
頬もぴりぴりしてくるので、出掛ける前にはクリームやワセリンなどを塗っておく方が安心。

そんな中、

モスクワ国立クラシックバレエカサートキナ&ワシリョーフの『くるみ割り人形』の舞台を観に行ってきました。

連日公演の最終日ということもあり、皆かなりお疲れだったと思いますが、皆良く踊りきりました!!さすがです。1月2日の夜公演でスタートし、その後3日から8日まで(7日だけお休み)1日2公演ずつというハードスケジュールをこなしていました。

このバレエ団で日本人の友人が踊っているのですが、既に大ベテラン。吉田むつきさんと言います。バレエ学校留学時代からの戦友(笑) キャストも彼女しか踊れないという役も多く、任せておけば大丈夫というバレエ団の甘え?が彼女を疲労させているようにも思うのですが・・・しかしその信用を得られるというのは並大抵のことではありません。

毎度おなじみ2幕の中国の踊り。カーテンコールにて

バレエ団はプリマ・ソリスト・コールドバレエ(群舞)等と分けられていますが、その階級によって踊るものが変わっていきます。ベテランにしか踊れないものもありますが、作品を引き継いでいく若手も舞台経験を踏まないと育ちません。
つまりバレエ団は若いダンサーを「育てる」役割も担っています。若手に多少無理させたり思い切った経験をさせたりすることはどこの世界でも同様ですよね。ロシアの劇場やバレエ団はとにかく舞台数が多いので、挑戦出来る場数は圧倒的に多いです。だからこそ舞台度胸がつくダンサーが増えますし、観客の層が厚いのも踊り手が育つ所以です。

主役のふたり 左:ガジムラード・ダーエフ 右:ナタリヤ・オグネワ

この日の主役は大ベテランのオグネワと新人の男の子。彼が彼女に引っ張られてどんどん良くなっていく感じがしました。やはり、一緒に踊る事でしか学べないことが沢山あります。彼女の堂々とした振る舞いや呼吸など、側にいると引っ張られるんですね。それが芸というものだと思います。

どうなりたいか目標とする人を定めたり、どこに身を置くかというのはとても重要なことだと思います。

また舞台はプリマだけいても仕方がありません。主役だけでなく群舞や周りがいることで、はじめて生き生きとし観客を楽しませてくれるスペクタクルとなるんですね。

つまり有名な絵も、額縁がないと引き立たないのと同じです。

バレエは物語を言葉を使わず、踊りと音楽と衣装そして舞台美術で創り出すエンターテイメントであり総合芸術。それを時代時代のダンサー達が身体を通して引き継いでいく。
そうやって舞台芸術という形の残らない芸術が残っていきます。

真っ直ぐに伸びた不思議な雲が1日中ずっと流れていました

丁度大寒波に見舞われた新年。晴れた日が続くとても気持ちの良いお正月休みとなりました。