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初演キャンセル『ヌレエフ』@ボリショイ劇場

ボリショイ劇場で初演予定だった「ヌレエフ」の上演がキャンセルとなりました。

こちらのニュース映像↓どんな感じの舞台か、少し垣間見れます

ウーリン総裁曰く来年の5月に再度上演を行う予定とのこと。インタビューの全てはこちら(ロシア語のみ)

色んな噂が流れてはいますが、気の毒なのはダンサーだなぁと思います。
6月末に日本公演から戻ってすぐ短期間で仕上げて。色々追い込まれて、その上でのキャンセル。

 

先日このプラゴン(ゲネプロ)を見てきたのですが、正直言うと、色々間に合っていなかったのは確かだと思います。
7月2日開催のバックステージツアーで一部リハーサルの様子を見ました。その同じシーンを舞台で観たときに配置や雰囲気も全然違っていたので、構成が定まりきっていなかったのかなと。

この演目は踊りだけでなくオペラ歌手の歌もあり、俳優さんによる言葉や朗読もあり、ダンサー本人が言葉を話したりと通常のバレエとは別物になっているので、そりゃ色々まとまらないだろうなーと正直思います。
せっかくの初演であれば、やはり納得出来るものを世に出すのが劇場の役割です。
しかしキャンセルするという決断はとても重い責任が伴います。国立の劇場として「間に合いませんでした」は許されません。

 

ただ3年ほど前から国の政策で、国立の劇場(バレエ・オペラ・演劇)に対して年間の総上演数(国内のみ)が確か20公演以上も引き上げられ、劇場内でもタイトなスケジュールを組まざるを得ない状況なのだと思います。その被害を一番被るのがダンサーではあるのですが。

企業と同じで、そこに属しているダンサー(会社員)は結局組織を回すコマでしかありません。しかしその一人一人の力がなければ、大きな仕事も成し得ないのは、劇場であれ一般企業であれ自営業であれ全く変わりありません。

大きな組織を運営することはやはりどこかでしわ寄せがくるとは思います。ただ大きな組織だからこそ、世間から期待もされるし、新しいものを成し遂げられる人材を揃えることも出来る。

古典という伝統を守りつつも、時代の流れに沿って新しい物を造って行かなくてはならない義務が劇場にはあります。だからこそ、今回は「現代の英雄(2015)」で成功をおさめたチーム(キリル・セレブレニコフ/監督、ユーリー・ポソホフ/振付)を再結成し、新しいものを造ろうとしたのだと思いますし。その作品の一部↓

色んな人の期待を裏切る結果になってしまってはいますが、あれこれ言っても仕方ありません。

中途半端なものを出すのはやはりプロとしてあってはならない姿。振付家しかりダンサーしかり。

ということで賛否両論ありますし政治的な疑惑や噂も沢山飛び交ってはいますが、どれを信じるも全部、個人の自由。言いたいことを言えば良いと思います。来年5月に観たい人は観れば良いのだと思います。

舞台は結局個人の好みの世界ですから。

 

さて、遅ればせながら今回の題材になっているルドルフ・ヌレエフ(長野由紀さん/舞踊評論家の評)

異端児で性格に難あり・激しくこだわりの強い人というイメージですが、だからこそ素晴らしい偉業を残し後世に大きな影響を与えた伝説のダンサーだと思います。

古い映像ですが。『ジゼル」1979 Lynne Seymourと

個人的な趣味ですがローラン・プティの「若者と死」バリシニコフも良いですが、ヌレエフも見応えあります。

編集可能な映像ではなく、リアルな舞台で彼の激しい人生を表現するのは中々厳しいだろうなと改めて思いました。同性愛、葛藤、スキャンダルなど生々しさ満載な人生ですしね。美しい巨像の世界だけではないそのリアルな彼の姿を舞台で表現しようと挑戦してみたものの…やはり色んな障壁があったという感じでしょうか。

2018年の5月初旬、どのように仕上がってくるのか。再考の時間となりそうですね。

ボリショイ日本公演に思うダンサーのキャリアについて

6月1日からボリショイバレエの日本公演が始まりました。まずは広島から、
そして本日4日からは東京文化会館で「ジゼル」と「白鳥の湖」が連日上演されます。

ワジーエフ監督はゲネプロの際、常に舞台の上でうろうろしてダンサーに指示を出しています。なかなかうるさい。笑

先日早稲田大学の方でまたバーチャル・バックステージツアーの講義をさせて頂く機会がありました。その時にダンサーについても色々調べていたのですが、今回の来日公演にあたってのダンサーたちへのインタビューや他の劇場内部の人たの話によると、どうやら2016年は出産ラッシュだった様です。
パパ・ママになったダンサーの多いこと。笑

ボリショイ劇場で活躍しているダンサーは20代が多く若いダンサーが主です。
ロシアではバレエ学校で10歳から18歳の8年教育を経て、国内外の劇場へ入団してプロのダンサーになるのですが、入団してからグンと伸びるダンサーもいれば、学校で才能があると言われていた子がそのまま活躍したり全く名前を聞かなくなることもあったり、皆それぞれです。
30歳を過ぎて来ると、肉体の衰え、プライベートの比重が増える(出産や子育てなど)ので、やはりキャリアをどう築いていくかは常に課題となっています。それは20代でももちろん同様ですし、ダンサーという職業に特化した話ではなくどの職業であっても同じ状況だとは思います。

しかしダンサー生命は非常に短く、日々の鍛錬を欠かすことが出来ない肉体労働です。平均的には40前後で引退です。怪我や色々な都合によってもっと早くキャリアを終えるダンサーも勿論沢山います。
自分たちのモチベーションもそうですが、身体と向き合い維持し向上させなくてはならない厳しいアスリートの世界なんですね。

産休に関してはロシアでは社会的な制度がちゃんとしていますが、やはり働くママを支えるのは周りの家族はもちろん、国や社会の制度ありきだよな、と改めて思います。あとは社会の意識も問題ですね。

プリマのオブラッツォーワは産後3ヶ月くらいで復帰していましたし、踊りにかける情熱はすごいなと思います。

舞台転換作業中。ジゼルの1幕から2幕へ

たまたま見つけたクリスティーナ・クレートヴァとアルチョム・オフチャレンコのちょっとしたドキュメンタリーです↓
はじめにクレートヴァが自己紹介をしていますが、そこで自分は朝起きた時に「私はバレリーナだわ!」と思って起きるのではなく、まずはママとして起きて息子ちゃんの朝食を作って・・・と、第一にママであり女性であり妻でありと、いろんな役割を持っているのだと言っています。どの様な立場であれ、その人の周りにはいろんなことが関わっており人生は多面的です。

オフチャレンコは毎日の朝のレッスンはより長くプロフェッショナルとしてキャリアを築いていくために欠かすことが出来ないものだと述べています。

なんでもそうですが、継続することこそ何事にも共通するプロフェッショナルの道ですね。というか、コツコツ努力できる人こそその道に残る人だとも思います。

それは何もバレエのキャリアの話だけでなく、仕事をする上で大事なことであり、結果自分に返って来るものなのだと思います。

・・・日本公演とは全く趣旨の違う話にはなりましたが。笑
今回の来日公演が総合芸術としてのバレエを観る機会の少ない日本のバレリーナのタマゴちゃんたちにとっても、刺激ある舞台となれば良なと思います。

舞台芸術を支える表舞台のダンサーと、裏舞台で尽力する見えない全てのスタッフの皆さんに、それぞれのプロフェッショナリズムを大事に頑張って欲しいですね。

私の職業は寝ることです
舌出てますよー