ふぁーにゃのツンデレ作品紹介『現代の英雄』編

街中がとても静かです。

空気も綺麗になったなーと、外に出た時に感じました。

モスクワは5月いっぱいは自粛だろうと言われていますが、それで済むとは思いません。

ロシア国内での感染者数は68622人(4月24日付)に達したようです。

 

もうどうお付き合いするか、それを前向きに考えていくしかありませんね。

 

 

さて、またまたボリショイ劇場の映像配信のお知らせです。

 

4月25日(土)19時から(日本時間夜中の1時)
*24時間以内であればYouTubeでいつでも無料で観られます。

 

今回は古典ではなく最近の作品。
ロシアの詩人であり小説家のミハイル・レールモントフ(1814-1841年)原作の『現代の英雄』です。

クラシックとは打って変わって現代的な作品。そして舞台は19世紀のロシア帝国。

ロシア文学がお好きな方やロシア人の方達にとっては馴染みのある作品です。

 

正直、私はこの本に馴染みがありません。笑

ので色々と文学の方も調べてみました。

 

ここで恒例のふぁーにゃと解説をさせて頂きます。

 

私にもまったく馴染みないわぁ

 

このレールモントフは実はどうやらとても性格が悪かったらしく…(!)まぁシニカルな感じはしますが。
こちらの記事をご参考ください→https://jp.rbth.com/arts/2014/10/20/50727

 

しかしこの『現代の英雄』は、ロシアの精神的リアリズムの先駆け的な作品と言われています。

 

この脚本・演出を担当したのが、キリル・セレブレンニコフ

と、振り付けはユーリー・ポソホフ。

 

セレブレンニコフは演劇界出身で、ゴーゴリ・センターやモスクワ・プーシキン劇場などで演出を手掛けている演出家です。2014年、そんな彼に元・芸術監督のフィーリンがオファーをし、レールモントフ生誕200周年を記念しての製作が始まりました。

 

その前にも、2011年にこの演出家はボリショイ劇場でオペラ『金鶏』を手掛けて(既にレパートリーから外れていますが)児童文学をかなりシュールで大人向け作品に仕上げて賛否両論あるのですが、とにかくお騒がせな演出家です。

ただその話題性が勝って、今ではとても有名人になってしまいました。

 

…ボリショイのスタッフ曰く、ロシアで屈指の“稼いでいる演出家”になったととかなんとか

 

2017年に手掛けたバレエ 作品『ヌレエフ』*はスキャンダラスになって上演が延期されたのも記憶に新しい方、いるのでは?と思います。

*20世紀の天才バレエダンサー、ルドルフ・ヌレエフの生涯を描いた作品。

 

あのものすごい破廉恥なのね

 

破廉恥というか、同性愛をまだタブーとしているロシアでは文化庁も黙っていられなかったのでしょう

 

なのでこの『ヌレエフ』は+18となっています。

 

ちなみにこの+何歳というのはロシアの法令で劇場が明記するように定められているのですが、あくまでも目安の年齢になります。アダルトな意味でも勿論必要ではあるかと思いますが

「子供が飽きずに理解して観られる年齢」という子供主体の観点でもありつつ、それよりも「周りのお客さんに迷惑をかけない為の指標」という配慮の観点からの数字だと思います。

飽きると騒いだりじっとしてられないことは当然あります。それはとても自然で仕方がないことなので、年齢に合った作品をチョイスするのが良いと思います。

 

やはり観劇は周りに迷惑をかけてはいけないのがマナーなんですね。そのマナーを守れるかどうかが、観劇の肝にはなります。

 

ねぇ、前置き長くない?

 

そろそろ始めたら。眠くなっちゃうわよ

 

ですね。

 

さて、原作の『現代の英雄』は5つの短編から構成されている作品ですが、このバレエでは3つの章をピックアップしています。

1章「ベラ」、2章「タマーニ」、3章「侯爵令嬢メリー」となっており、主役のペチョーリンも章ごとに3人変わります。

 

この作品、“葛藤”がベースにずっとあるので、細かく説明するよりも大雑把な流れを頭に置いて観て貰うと良いと思います。

ざっとしたあらすじはこちら⬇︎

 

1章 舞台はコーカサス

気難しい将校ペチョーリンは、軍隊でもはじかれコーカサスへ送られます。そこで美少女ベラと恋に落ちるのですが、彼女を手に入れた途端徐々に興味をなくして放置。ベラは強盗に襲われてしまいます

 

恥を知りなさい

 

舞台がコーカサスということもあり、民族舞踊的な群舞が素敵です。

 

 

2章 黒海沿岸の街タマーニ

タマーニに滞在中に起きた事件。謎の女性ウンディーナが何かしらの取引をしていることに気がついたペチョーリン。彼女に翻弄され暗殺されそうになります。

 

色っぽさムンムンが楽しめるところ

 

盲目の少年と大きなおばさんが出てくるのですが、演出が見ものです。お楽しみに。

 

第3章 コーカサスのピチャゴルスク

保養所として有名な湯治の街。ここでペチョーリンは旧友グルシニーツキーと再会。この友人が恋をしているのがメリー令嬢ですが、ペチョーリンはちょっかいを出し、旧友との決闘となり彼を死なせる。

 

プーシキンの「エフゲニー・オネーギン」みたいね。決闘は男の美学だったのかしら?やだやだ

 

自分もヴェラ(既婚者)という好きな女性がいたのですが、どうしても手に入れられない。そんなダメ人間としての葛藤。

こんな風にどこにいても何をしても、自分は何者であるのか・・・苦悩で終わり

 

 

ふぁーにゃ
ふぁーにゃ
ええっ

 

ちなみに車椅子の傷痍軍人だちは”Russian National Wheelchair Dance Sport team membersという車椅子ダンスチームの皆様が演じています

こういった共演の試みも初めて。

だからセレブニコフは話題になりやすいのでしょうね。

 

作曲を担当したイリヤ・デムツキーは32歳という若さでこの『現代の英雄』の幕物作品の作曲をしました。
(カーテンコールの時、一番最後出てきて端っこにいるひょろっと?した感じの人)

バレエ作品はおろか、幕物で作曲するなんてすごいチャレンジです。

はじめて聴いた時は「え、なにこれ」というような踊りにくい音楽だったそうですが、そりゃそうですよね。

最終的には音楽と振り付けとダンサーが合致した仕上がりです。皆頑張った・・・

 

以上のように、主役が章ごとに異なったり、車椅子ダンサーが出てきたり、若手作曲家を使ったりを含めていろんな意味で新しい試みだったことはお分かり頂けると思います。

 

さて、

『現代の英雄』での演劇の脚本家との仕事は、ダンサーたちにとって新しい経験だったのだと思います。

登場人物が演じる「舞台」という括りでは同じものではあるとはいえ、演劇とバレエは似て非なるものです。
言葉と踊りでは表現の仕方が全く違っており、演出家の意図を踊りに落とす作業は産みの苦しみ以外の何物ではないとは思います。

しかしロシア人にとってレールモントフはロシア文学の英雄でもあり、昔から親しんでいる文学を現代の自分たちで体現出来ることはダンサー冥利に尽きます。面白い経験だったでしょうね。

 

 

主人公は章を追うごとに年を取り、出会いがあり、人として成熟していっているのですが、人間ってそう簡単には変わらない。

凡人であることを憂いて、自分の闇は誰にも知り得ないことに絶望しつつも、やはり理解者が欲しい。希望も見出したい・・・みないな葛藤がずっと描かれています。

 

王子様とお姫様が結ばれました😽冒険しました😺クーデター起こしました😾

みたいな遠いお伽噺ではなく、本の中だけど少し遠くてすぐそばにある身近な物語。

そんな人間の頭の中を表現している作品。とってもロシア的。笑

 

 

結局自分でしか葛藤の処理なんて出来ないのよね

 

もがくよりそんなもんだと気付く方が早いってことよ

 

ふぁーさん、悟っていますが・・・

そんな一言でまとめちゃったら作品にならないじゃないですか。笑

 

普遍的な人間としての葛藤、愛と苦悩、己の不甲斐なさなどなど、ドロドロを描きたかった作品なのは間違いありません。

ザ・ロシア文学。ほら、ドフトエフスキーとか、ゴーゴリとか・・・

 

 

『現代の英雄』は2006年に映画化されているのでそちらをご覧になってみるのも良いと思います。

 

バレエにもこんな哲学的な作品があるだなぁと観てみるのも面白いと思います。

ふわふわして綺麗〜な舞台より、案外このようなシリアスな作品の方が入りやすいという方もいると思いますし。

 

思い込み、取っ払いましょ〜

 

19世紀ロシアの軍人を通して、不条理な世の常に思い馳せてみませんか。

 

日向ぼっこして寝るが一番ね

 

 

 

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舞台というものは演者たちだけでは成り立ちません。裏舞台で支えている多くの人々の尽力あってこそ表舞台がより引き立ちます。
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生活の中で芸術はなくても良いものかも知れません。しかしあるとより豊かになるものだと私は考えます。 人でしか紡ぐことの出来ない伝統の世界。色んな角度から眺めてみると、きっと新しい発見があるはずです。

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