Kバレエカンパニー時代の仲間との再会

先週ボリショイ劇場新館でイングリッシュ・ナショナル・バレエ団の『ジゼル』が来ていたのですが

FacebookでKバレエカンパニー時代のダンサー仲間がモスクワ行きまーす

というようなアップを見て、あ、そうだ、彼はこのバレエ団だった!と記憶が繋がりました。

 

今回上演されたアクラム・カーンのジゼルはこちら⬇︎

2019 Dance Europe 長野由紀さんの解説を発見。←是非!

 

早速メッセージをして、公演と公演の隙間時間に会えることに。

なんと15年ぶり(!)の再会。

彼は2002年の「眠りの森の美女」の時からKバレエにjoinしたKボーイズ。所謂同期です。
マドリード出身でイングリッシュナショナルスクールを卒業。Kバレエカンパニーを経てイングリッシュナショナルに入団しました。

ダニエルのご紹介byEnglish National Ballet official site

彼はモスクワは今回初めて。とても素敵なところだと気に入ったと言っていました。よかった。笑

 

それにしても、と

「ロシア人のダンサーって、本当皆一様に体型も背丈もスタイルの良さも同じで驚いた」

「250人−300人のダンサーを抱えている劇場ってとってもアメージングだよ」

「くるみ割り人形の時、僕たちは毎日クレイジーな公演数を60人という少ない人数でこなしているけど

ボリショイはそれだけダンサーがいるからいいね」

そして

 

「お客さんの反応が特別にすごい。やはり芸術が根付いている国なのだなと実感せざる得ない」

 

と言っていた言葉が印象的でした。

 

ヨーロッパのダンサーでさえ(というとちょっと語弊がありますが)ロシアの劇場芸術の深さを体感したようです。
もちろん彼らのパフォーマンスが評価されたということではありますが、コンテンポラリーがヨーロッパ程根付いていないモスクワでも、お客さんの反応がかなり良くて最高だったと言っていました。

モスクワで再会できるとは。嬉しいサプライズ

 

「僕たちのカンパニーはもう皆んなバラバラで、人種も違うしのっぽもいればチビもいるしふくよかな子もいれば痩せてる子もいる。同じなんていうのは考えられないのだけど、ロシアは皆同じなんだね。本当にびっくりした。」

と。

この言葉から感じるのは、ロシアはやはりバレエ=エリート教育が根付いているのだなと。

ロシア人のダンサーたちは皆体型がバレエ向きと言われています。

所謂細く長い骨、小さい顔に長い手足(体のバランス)高い背丈、高い甲、強い筋肉、股関節の可動域、

どれをとっても「普通以上」を求められる世界です。というかそういう人たちを選んで教育します。

もちろん、背の低い子もいますし、甲がそこまで高くない子もいます。
しかし、殆どのダンサーが所謂「バレエ向き=姿の美しさ」を兼ね備えているのは確かです。
つまり容姿でも選んでいます。(身も蓋もない・・・)

 

極端にいうと、骨格の美しさなんてDNAの問題ですが。笑 本人にはどうしようもないこと。

 

そして先生の圧力が激しいバレエ学校で8年間磨き抜かれた子たちが劇場でダンサーとなります。

そして舞台を楽しみに通うお客さんのなんて多いこと。
それは寒い冬が長い気候も大いに関係していますが、モスクワのあちこちに劇場があることや、地方都市に行っても必ず立派な劇場が聳え立っていることからも容易に想像がつきます。

 

そうです、ダンサーたちを育てる教育期間が整っていていると同時に、舞台を観るお客さんたちも一緒に育っているのです。彼らのパフォーマンスを楽しみに観る観客の目が、またダンサーを育てます。そしてそんな環境で舞台に立つダンサーも磨かれないわけがありません。

全ては相乗効果。

この日丁度バックステージツアーのご案内もあったのですが、参加して頂いたご夫婦が

「こんな劇場という環境を整えて維持するということが出来るからこそ、アーティストが育つのですね」

と同じようなことを言っていたのも印象的でした。

 

 

環境が人を作ると良く言われますが、

【教育・場所・指導者・演者・協力者・支援者】どれが欠けてもこの劇場芸術は守られません。

つまり

【国立のバレエ学校・劇場・先生/芸術監督・ダンサー/オペラ歌手・デザイナー/指揮者/オーケストラ・国/スポンサー/企業】

これらを揃える環境を、長い年月をかけて積み重ねてきた伝統です。

 

舞台はダンサーだけでは成り立たない。お客さんありきだと言っていたダニエルの言葉も印象に残りました。

「白鳥の湖」舞台袖にて。右から3番目がダニエル「なんだこれ、僕ドラッククイーンみたいじゃないか!」と。ふたりで大笑いしました

15年前一緒に舞台に立っていた時は哲也さんが作り出してくれている環境やスポンサー、お客さんに感謝はしていながらも、きっとお互い自分に必死過ぎて、そんなことまでに思いを巡らせられなかったように思います。

役がつくか、失敗しないか、うまく踊れるか、理想と現実の間で追いついていない自分が悔しい などなど

そういうことに気持ちが引っ張られているのは若さゆえ当然のことなのですが(むしろそれがないと上達しません)
やっぱり歳を重ねてくるから見えてくる世界もあるように思います。

 

良い意味での諦めです。これって本当に大事なこと。

 

これはもちろん、バレエの世界だけでなく普段の生活、人生にもどんな世界にも言えることですね。

ボリショイ劇場のスタッフエントランス前にて

 

あの頃の仲間は皆もうそれぞれでバラバラですが、舞台を共にした時間ってずっと消えないんだなと改めて実感。
渦中にいる時は神経質にピリピリしてて本当にドロドロな自分との葛藤で忙しかったですが・・・笑

 

これからのキャリアについても話してくれました。同い年の彼はもう身体あちこちにガタがあちこちきてるよーしんどいよ〜とお茶目に語っていましたが、もう本当に辛いのだと容易に想像がつきます。老いには勝てません。しかしそことどうやって付き合うかですし、この年齢まで続けてきたからこその深みも表現も出来るわけで。

ダンサーという現役を最後まで全うして(その予定で)その後のことも彼なりに考えているようです。いつでも応援してます。

 

環境を整えていく重要性。これってどんな世界にも通用することだと思います。

時間がかかることですが、微力ながらもその一端を担うことが日本で出来ないかなと改めて思いました。
ボリショイ劇場の協力を得られる今だからこそ、私にだけでなく日本のバレエ界にも、もちろんバレエ界以外でも芸術が好きな人たちにとっても、劇場芸術を通して新しい世界を知ることの面白さを知ってもらう機会を作っていきたいなと。

 

また皆に会いたいです。

「眠りの森の美女」のパンプレットより。懐かしいとしか言えない。笑

 

 

 

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