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谷崎潤一郎『秘密』の朗読劇

久しぶりのブログ更新です。モスクワを暫し離れ、遅ればせながらのお正月休みを日本で過ごしています。

昨日福井市美術館にて朗読劇を観てきました。

福井市美術館
福井市美術館

名古屋を拠点にし、全国で公演を行っている「劇団クセックACT」の看板俳優榊原忠美さんと、福井FM放送のアナウンサー飴田彩子さんによる“ブランノワール”の朗読です。

朗読と音楽や踊りなどとコラボする朗読劇を主催する今年9年目のグループだそうです。
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ブランノワールのサイトには
『朗読劇&音楽&照明&舞台&制作&美術のコラボレーション』とあるように
照明とシンプルな舞台設定により、朗読が引き立つ劇を展開しているんですね。

谷崎潤一郎
谷崎潤一郎

今回の題材は谷崎潤一郎の『秘密』
更にタップダンサーの浦上雄次さんとのコラボレーション。(浦上さんは北野武監督作品『座頭市』(2003年)にも出演されています)
途中、白地に赤と黒の模様の入った着物を肩からかけ風に乗せながらタップを踏んでいました。その姿は、カツンという音に合わせ空気もふるわせ、臨場感が出ていました。特に「路地で雨がざあざあ降っている」というシーンでの連続的な足を踏む音は、まるで観客もその路地に迷い込んだような錯覚を与えるのに十分な効果がありました。

谷崎潤一郎の『秘密』のあらすじはこちら

元いた環境から逃げ出したくなった「私」は、とある寺に住み着いた。夜な夜な読書したり酒を飲んだり変装したりして街に繰り出していたが、古着屋で見つけた小紋縮緬の袷をきっかけに本格的な女装をはじめる。古風なセンスとその美貌とで女性としての魅力に自信を持つようになった「私」だったが、ある日、昔関係を持っていたT女と再会する。それからお互い秘密を纏ったまま逢瀬を重ねていたが、男はその秘密が知りたくなり、ついには女の住処を突き止めてしまう。秘密を知った男はT女への興味を失くし、より色濃い、血だらけな歓楽を求めるようになる。(by Wikipedia)

谷崎潤一郎の小説はなんとなく耽美的というか、美しいものに酔いしれて痺れてしまっている?ような勝手な印象がありましたが、今回の『秘密』は正にそうですね。
福井FM放送のアナウンサー飴田彩子さんの朗読もどこかドスが効いており、妖しい謎の女のイメージがぴったりです。

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会場の様子。真ん中に大きめの舞台があり箱型の座れる黒い椅子が二つ。
会場の様子。真ん中に大きめの舞台があり箱型の座れる黒い椅子が二つ。
装飾とライトの効果も面白い
飾ってあった装飾とライトの効果も面白い

影や音を効果的に使う演出は、この『秘密』以外の作品にも見られる特徴だそう。朗読というと座って本を読むという動きの少ないイメージがありますが、効果的な照明、踊りや音楽とのコラボによって演劇でもありミュージカルの様でもある独特な世界を見せることが出来るものなんですね。
語り手の榊原忠美さんはジャン・ジオノ原作『木を植えた人』の朗読プロジェクトというのも主催しており、全国で活動されているそう。「話のどんぐりを植える」と語る彼の言葉は、ネットや情報にまみれた現代において、人の肉声で物語を展開し耳を傾けることという原点に回帰するような、人のぬくもりを伝える活動なのだなと感じました。

影絵の様な美術館。ちょっと宇宙ちっく
影絵の様な美術館。ちょっと宇宙ちっく

サイト等はこちら

劇団クセックACT 
木を植えた人のひとりごと(榊原忠美さんのブログ)
浦上雄次HP

 

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総合芸術としてのバレエ

舞台というものは演者たちだけでは成り立ちません。裏舞台で支えている多くの人々の尽力あってこそ表舞台がより引き立ちます。
建築・歴史・哲学・文学・音楽・美術・デザイン・踊り・歌、全てを包括しているのが劇場芸術です。
生活の中で芸術はなくても良いものかも知れません。しかしあるとより豊かになるものだと私は考えます。 人でしか紡ぐことの出来ない伝統の世界。色んな角度から眺めてみると、きっと新しい発見があるはずです。

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